電気自動車(EV)ベンチャーのゼロスポーツが突然、事業を停止した。きっかけはEV集配車を納入するはずだった日本郵便が「納期の遅れ」を理由に契約を解除したからだ。負債総額は11億7700万円。従業員約70人は2011年3月1日付でほぼ全員が解雇された。3月4日に自己破産を申請する予定で準備を進めている。
両社は2010年8月に契約を結んだ。1000台という過去に例のない大型受注で、EVカーは参入障壁が低く、大手メーカーでなくても受注できることを印象づけた。
創業者で社長の中島徳至氏は、10年12月に「ほんとうのエコカーをつくろう」(日経BP社)を出版したばかり。そこではEVカーの将来性について語っている。
「ベース車両」の仕様変更で納期遅れ?
日本郵便は2009年から、三菱自動車や富士重工業、そしてゼロスポーツに、EV集配車を試験的に納入させた。価格や性能を比較し、11年度分のほぼ全部にあたる1000台を、ゼロスポーツに決定。契約価格は約35億円とされる。
ゼロスポーツのEVカーは、約8時間の充電で100キロメートル以上走り、価格は大手の2~3割安い。富士重工などの軽貨物車両をベースにリチウムイオン電池やモーターなどの部品を国内で調達して組み立て、自治体向けなどに納入する実績をもつ。
今回、契約解除に至る原因は、EV集配車のベースとなる車両の仕様変更をめぐって起こった。ゼロスポーツの中島社長は、日本郵便が主張する「納期の遅れ」について「日本郵便側の車両の仕様変更に応じたのが原因」と説明する。契約解除をきっかけに融資を受けていた金融機関から返済を求められ、事業停止に追い込まれた。
一方、日本郵便は「仕様変更を申し入れたことはない」と断言する。ただ、日本郵便の業績悪化も背景にあるともみられている。そもそもEV集配車の導入は「赤字の事業会社がいま推し進めることではない」との批判が内部からもあったとされる。
ベース車両の仕様変更でひと悶着あったことで、契約解除につながったようだ。
郵政に1000台EV納入 岐阜のベンチャーが大手に競り勝つ
2010/8/29 11:52
日本郵政グループの郵便事業会社が郵便の集配車として、岐阜県のベンチャー企業「ゼロスポーツ」の電気自動車(EV)を2011年度に1030台購入する契約を結んだ。郵便事業会社は郵便の集配や営業などに使う四輪車全2万6000台を電気自動車(EV)やハイブリッド車に順次切り替える方針だ
2009年度は三菱自動車と富士重工業からEVを計40台購入するなどしたが、今回は大手自動車メーカーを押しのける形で、ベンチャー企業が大量契約を獲得した。EV開発は米国のテスラ・モータースや中国などの新興勢力の躍進が目立つが、日本のベンチャー企業が底力を見せた。
年1000台超えるEVの生産・販売は国内最大規模
年間1030台のEVの生産・販売は、国内では最大規模で、郵便の集配車を通じて、日本でEVが一気に普及する可能性がある。ゼロスポーツは1994年、岐阜県各務原市で設立。スバルをメインに「走り屋」向きの自動車パーツの開発、販売を手掛けている。自動車のアフターパーツ、カスタマイズの分野では「一流ブランド」で知られるが、創業直後の98年からEVプロジェクトを立ち上げ、EV開発でも実績がある。09年7月には郵便事業会社にEVの実証実験車両を3台納入しており、今回はその実証実験が高く評価された。
ゼロスポーツが実証実験で納入した郵便集配車は、富士重工のスバルサンバーがベースで、EVの核となるリチウムイオン電池や駆動モーターは外部から調達。約8時間のフル充電で180キロの走行が可能という。
日本郵政関係者によると、「郵便の集配車にEVはぴったり」という。EVは1回の充電で走れる距離はガソリンやディーゼルエンジン車に及ばないが、郵便物の集配は1回当たり20~30キロ程度の走行で済むため長い距離は必要なく、むしろトルクがあり、坂道などでも力強いEVの方が機動力を発揮しやすい。排ガスがなく、騒音も少ないため、町中の走行に向くのは言うまでもない。
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