2015年10月29日木曜日
「日本一の過疎」に韓国人が殺到!~「田舎の小さなパン屋」が熱狂的に支持されるワケ
「日本一の過疎」に韓国人が殺到!~「田舎の小さなパン屋」が熱狂的に支持されるワケ
どうしてこんなに働かされ続けるのか? なぜ給料が上がらないのか? 自分は何になりたいのか?――人生どん底の著者を田舎に導いたのは、天然菌とマルクスだった。講談社+ミシマ社三島邦弘コラボレーションによる、とても不思議なビジネス書ここに刊行。「この世に存在するものはすべて腐り土に帰る。なのにお金だけは腐らないのはなぜ?」--150年前、カール・マルクスが「資本論」であきらかにした資本主義の病理は、その後なんら改善されないどころかいまや終わりの始まりが。リーマン・ショック以降、世界経済の不全は、ヨーロッパや日本ほか新興国など地球上を覆い尽くした。「この世界のあらたな仕組み」を、岡山駅から2時間以上、蒜山高原の麓の古い街道筋の美しい集落の勝山で、築百年超の古民家に棲む天然酵母と自然栽培の小麦でパンを作るパン職人・渡邉格が実践している。パンを武器に日本の辺境から静かな革命「腐る経済」が始まっている。
【著者・渡邉格(わたなべ いたる)から読者のみなさんに】
まっとうに働いて、はやく一人前になりたい――。回り道して30歳ではじめて社会に出た僕が抱いたのは、ほんのささやかな願いでした。ところが、僕が飛び込んだパンの世界には、多くの矛盾がありました。過酷な長時間労働、添加物を使っているのに「無添加な」パン……。効率や利潤をひたすら追求する資本主義経済のなかで、パン屋で働くパン職人は、経済の矛盾を一身に背負わされていたのです。
僕は妻とふたり、「そうではない」パン屋を営むために、田舎で店を開きました。それから5年半、見えてきたひとつのかたちが、「腐る経済」です。この世でお金だけが「腐らない」。そのお金が、社会と人の暮らしを振り回しています。「職」(労働力)も「食」(商品)も安さばかりが追求され、
その結果、2つの「しょく(職・食)」はどんどんおかしくなっています。そんな社会を、僕らは子どもに残したくはない。僕らは、子どもに残したい社会をつくるために、田舎でパンをつくり、そこから見えてきたことをこの本に記しました。いまの働き方に疑問や矛盾を感じている人に、そして、パンを食べるすべての人に、手にとってもらいたい一冊です。
第一部 腐らない経済
第一章 何かがおかしい(サラリーマン時代の話・祖父から受け継いだもの)
第二章 マルクスとの出会い(父から受け継いだもの)
第三章 マルクスと労働力の話(修業時代の話1)
第四章 菌と技術革新の話(修業時代の話2)
第五章 腐らないパンと腐らないおカネ(修業時代の話3)
第二部 腐る経済
第一章 ようこそ、「田舎のパン屋」へ
第二章 菌の声を聴け(発酵)
第三章 「田舎」への道のり(循環)
第四章 搾取なき経営のかたち(「利潤」を生まない)
第五章 次なる挑戦(パンと人を育てる)
パン屋が書いた異色の「経済書」が韓国で大ウケ
去る9月30日(水)の夜、韓国・ソウル市内のカフェで講演イベントが開かれた。会場に集まった100名ほどの観客の眼差しは、日本からやって来た一組の夫婦に向けられていた。
前のめりになってふたりを見つめ、ふたりの言葉を熱心にメモに残す(もちろん通訳が入っている)。質疑応答の時間には客席で次々と手が挙がり、講演終了後はサインを求めて長い列ができる――。
韓国の人たちの注目を集める一組の夫婦とは、人口7,600人、山間に人々が暮らし、林業が盛んな鳥取県智頭(ちづ)町でパン屋とカフェを営み、ビール事業への挑戦も始めた「タルマーリー」の渡邉格(いたる・44歳)・麻里子(37歳)夫妻だ。
夫の格さんは職人としてパンやビールの製造に取り組み、妻の麻里子さんは女将として売り場の一切を取り仕切る。ふたりのもとでは、5人の従業員と3人のアルバイトスタッフが働く。
「タルマーリー」は日本でもその名が広く知られている。休日ともなると、鳥取県内のみならず、広く中国・関西地方から、ときには九州や関東からも、大勢の人が「タルマーリー」目掛けてやってくる。先のシルバーウィークには一日400人もが訪れたという。
店は、決してアクセスのいい場所にあるわけではない。鳥取市内からでもクルマで50分ほど、大阪からならクルマで2時間ほどかかる。そういう場所に、わざわざ人が訪ねてくるのは、夫の格さんが2013年9月に出版した1冊の本の影響が大きい。
『田舎のパン屋が見つけた「腐る経済」』(講談社)。
このちょっと変わったタイトルの本は、著者がパン屋の視点で資本主義経済の問題点を指摘し、それを克服するための経済・経営のあり方を模索する現状を描いたものだ。発売以来、日本でも読者の支持を集め、2015年10月現在で8刷2万部とロングセラーになっている。
この本が、昨年6月に韓国で翻訳・出版されると、日本以上に大きな反響で受け入れられた。
新聞、テレビなどのさまざまなメディアで取り上げられ、1年あまりで10刷3万部に達している。韓国の人口は5,000万人弱で日本の4割ほど。単純計算すれば、日本で7万部を超える売れ行きに相当する。
冒頭で紹介したイベントは、韓国のネット書店4社(YES24・Interpark・KYOBO・Aladin)と、韓国でこの本を出版した「The SOUP」社が共同で開催した「読者の集い」だ。
翌10月1日(木)夕方にも100名規模の「読者の集い」が開催され、会場は読者の熱気に包まれた。聞けば、2回合計で200名の枠を上回る読者からの申し込みがあり、抽選が行われたという。
この日もタルマーリーのふたりに次々と質問や感激の声が寄せられ、講演終了後はやはり長時間のサイン会となった。なかには、「タルマーリーで働きたい」と熱い想いをぶつける高校生の姿もあった。ふたりと言葉を交わして歓喜の表情を浮かべる人たちの姿は、「読者」というよりも「熱狂的なファン」のように見えた。
日本のメディアでは、韓国は反日感情一色に染まっているかのような報道が目につくが、この日の熱狂ぶりを見ると、それが必ずしも韓国の実像を表していないことは明らかだ。
現実の韓国では、村上春樹や東野圭吾、宮部みゆきといった日本人作家の小説が人気で、書店には日本文学コーナーが設けられているほどだ。韓国で1年間に出版される1万点を超える翻訳書の4割近くは日本語からの翻訳だとも言われている。
だが、本書は小説でもなければ著者も人気作家だったわけではない。パン屋の主が書いた等身大の社会書・経済書が、韓国の人たちの心を惹きつけているのは、驚くべきことと言えるだろう。
2015年10月22日木曜日
株の豆知識 専門家が指標とする“予想ROE”って何?
“チャイナショック”“米国の利上げ観測”――。日本株を取り巻く外部環境は揺れに揺れている。日経平均株価は低迷したままで市場関係者からはため息が漏れる。だが、悲観ばかりではない。こんなときこそ、“筋肉質”企業を見つけて賢く投資したい。
ではどうすればいいのか。マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏は「外国人投資家の目線にならうといい」とアドバイスする。
「現在のROE(※1)の水準ではなく、予想ROEが今後改善しそうな銘柄を探すのがいいでしょう」
カブドットコム証券・投資ストラテジストの河合達憲氏も、「毎年利益を出し続け、年々成長できるかどうかが企業の使命」と話す。
「例えばバブル期に過去最高益をたたき出したものの、何年もそれを超えられないようでは外部環境の恩恵を受けただけ、となってしまう。それでは、その時代その時代に合わせた経営は失敗とも言えます。やはり経営者には、過去の最高益を超えていけるかどうかにこだわりを持ってほしい。それが実現できれば、ROEなどの指標は後からついてくるものです」
その観点で河合氏は、株式指数「JPX日経インデックス400」に採用される銘柄のうち、3期連続で経常利益が増益の企業をスクリーニング。そのなかから、外国人観光客(インバウンド)の需要や環太平洋経済連携協定(TPP)といったテーマ性のある企業や、業績の変化が期待できる企業、円安などの外部環境にも対応し経営手腕を発揮している企業など、プラスの要素を持つ銘柄を選んでもらった。
例えば、「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイは13期連続で過去最高益を更新する見通しで、増収増益を続けている。さらに、前期は2円増配し、今期も13円増配する方針だ。MonotaROも6期連続で過去最高益を更新する見通しで、1対2の株式分割、4円の増配も実施と、株主還元に力を入れている。
M&Aに力を入れているのはALSOKだ。昨年、介護サービス会社を買収し、主力のセキュリティー事業だけでなく、新たに介護事業の拡大にも力を入れている。業績も好調そのもので、6期連続増収、7期連続増益、3期連続で過去最高益を更新する見通しだ。17年度までの中期経営計画でROEは10%程度、配当性向で3割を目標に掲げている。
コーセーやピジョン、エイチ・アイ・エスなどは高成長を続けているだけでなく、インバウンドというテーマ性もあわせ持っている。
そして、河合氏が「高い経営手腕を発揮している」と評価しているのが、円高を追い風に“円高時代の勝ち組”と呼ばれたニトリホールディングスやエービーシー・マートだ。
「この2年ほどで、本来なら逆風となる円安が50%ほど進んだにもかかわらず、両社ともに過去最高益を更新しています。それは外部環境の変化に対応した経営者の手腕によるところが大きい」
また、岡三証券・シニアストラテジストの石黒英之氏も、IoT(モノのインターネット)など、市場として今後爆発的に拡大することが確実視されている電子部品などに注目しているという。
「今、150億台のデバイスがネットにつながっていると言われていますが、20年には500億台まで増えると見られています。すでに時計や眼鏡などの日常アイテムがネットにつながりつつありますが、今後は自動車や自動販売機、工場設置機器、医療機器などもネットにつながる時代が到来するのです」
この流れの恩恵を受けるのは、自動車や家電向けのモーターを製造する日本電産、世界トップのセラミックコンデンサーを持つ村田製作所などと石黒氏は見ている。
「また、ロボット業界や介護業界も市場の拡大が見込まれています」(石黒氏)
ROEはあくまでも経営の達成具合を見る際や投資判断の一つの目安でしかない。しかし、自社株買いや増配、M&A、設備投資などでROEを高めようと企業の意識が変わり、ROEは着実に株式市場に根付きつつある。約100兆円あると言われている上場企業の手元流動性資金。この巨大な“山”が今、動き始めた。
※1 自己資本利益率と呼ばれ、企業の自己資本に対してどれくらいのリターン(純利益)を生み出したかを見るもの。
ではどうすればいいのか。マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏は「外国人投資家の目線にならうといい」とアドバイスする。
「現在のROE(※1)の水準ではなく、予想ROEが今後改善しそうな銘柄を探すのがいいでしょう」
カブドットコム証券・投資ストラテジストの河合達憲氏も、「毎年利益を出し続け、年々成長できるかどうかが企業の使命」と話す。
「例えばバブル期に過去最高益をたたき出したものの、何年もそれを超えられないようでは外部環境の恩恵を受けただけ、となってしまう。それでは、その時代その時代に合わせた経営は失敗とも言えます。やはり経営者には、過去の最高益を超えていけるかどうかにこだわりを持ってほしい。それが実現できれば、ROEなどの指標は後からついてくるものです」
その観点で河合氏は、株式指数「JPX日経インデックス400」に採用される銘柄のうち、3期連続で経常利益が増益の企業をスクリーニング。そのなかから、外国人観光客(インバウンド)の需要や環太平洋経済連携協定(TPP)といったテーマ性のある企業や、業績の変化が期待できる企業、円安などの外部環境にも対応し経営手腕を発揮している企業など、プラスの要素を持つ銘柄を選んでもらった。
例えば、「ZOZOTOWN」を運営するスタートトゥデイは13期連続で過去最高益を更新する見通しで、増収増益を続けている。さらに、前期は2円増配し、今期も13円増配する方針だ。MonotaROも6期連続で過去最高益を更新する見通しで、1対2の株式分割、4円の増配も実施と、株主還元に力を入れている。
M&Aに力を入れているのはALSOKだ。昨年、介護サービス会社を買収し、主力のセキュリティー事業だけでなく、新たに介護事業の拡大にも力を入れている。業績も好調そのもので、6期連続増収、7期連続増益、3期連続で過去最高益を更新する見通しだ。17年度までの中期経営計画でROEは10%程度、配当性向で3割を目標に掲げている。
コーセーやピジョン、エイチ・アイ・エスなどは高成長を続けているだけでなく、インバウンドというテーマ性もあわせ持っている。
そして、河合氏が「高い経営手腕を発揮している」と評価しているのが、円高を追い風に“円高時代の勝ち組”と呼ばれたニトリホールディングスやエービーシー・マートだ。
「この2年ほどで、本来なら逆風となる円安が50%ほど進んだにもかかわらず、両社ともに過去最高益を更新しています。それは外部環境の変化に対応した経営者の手腕によるところが大きい」
また、岡三証券・シニアストラテジストの石黒英之氏も、IoT(モノのインターネット)など、市場として今後爆発的に拡大することが確実視されている電子部品などに注目しているという。
「今、150億台のデバイスがネットにつながっていると言われていますが、20年には500億台まで増えると見られています。すでに時計や眼鏡などの日常アイテムがネットにつながりつつありますが、今後は自動車や自動販売機、工場設置機器、医療機器などもネットにつながる時代が到来するのです」
この流れの恩恵を受けるのは、自動車や家電向けのモーターを製造する日本電産、世界トップのセラミックコンデンサーを持つ村田製作所などと石黒氏は見ている。
「また、ロボット業界や介護業界も市場の拡大が見込まれています」(石黒氏)
ROEはあくまでも経営の達成具合を見る際や投資判断の一つの目安でしかない。しかし、自社株買いや増配、M&A、設備投資などでROEを高めようと企業の意識が変わり、ROEは着実に株式市場に根付きつつある。約100兆円あると言われている上場企業の手元流動性資金。この巨大な“山”が今、動き始めた。
※1 自己資本利益率と呼ばれ、企業の自己資本に対してどれくらいのリターン(純利益)を生み出したかを見るもの。
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