怒りの沸点「6秒」を乗り越える
実は、怒りのピークは6秒間しかない。その間をどう乗り切るかによって、その後の気分は大きく変わる。この「6秒」という時間を上手く制御できなければ、さらに怒りを加速させることになるだろう。逆にこの6秒間怒りをグッとこらえられれば、その後も理性的な対応にスムーズに移ることが出来る。そのために必要な、この「6秒」を乗り切るためのテクニックを順を追って紹介していこう。
「6秒」がやってきた!まずは落ち着いて『ディレイテクニック』
「怒りで頭が真っ白になる」。そんな経験はないだろうか。何も他のことを考えられない、他人の言葉が耳に入らないなど、怒りに脳を支配されている状態だ。この状態の時は、複雑なことは考えられない状態にある。とにかくシンプルな方法で怒りから自分の意識を反らす行動が効果的である。そのためにアンガーマネジメントはいくつかのディレイ(=反応を遅らせる)テクニックを提案している。
たとえば・・・
・数字を数える(『カウントバック』)
・深呼吸を繰り返す(『呼吸リラクゼーション』)
・特定の短いフレーズを言い聞かせる。または、単純な動作を繰り返す(『コーピングマントラ』)
例:「大丈夫」「落ち着いて」「すぐ終わる」等のフレーズ、首を回す等の動作
・目に入ったものを細かく観察する(『グラウンディング』)
例:色、形状、材質、傷の有無など
・思考を停止させるような言葉、イメージを思い浮かべる(『ストップシンキング』)
例:「止まれ!」「考えるな!」等の言葉、真っ白の紙、青空などのイメージ
などがある。
極めて単純な方法に感じるかもしれないが、この時点ではその程度のことしかできない。とにかく怒りの爆発を阻止するために、単純な行動を繰り返し行おう。
少し落ち着いたら『ポジティブ・モーメント』『ポジティブ・セルフトーク』
この時点では怒りのピークは越えたが、まだ気持ちが混乱した状態は続いている。そんな気分を落ち着かせ、次のステップへ進む手助けをしてくれるのが次の二つのテクニックだ。
「ポジティブ・モーメント」は、自分の成功体験を思い起こしたり、楽しかった記憶を思い出すことで気持ちを安らかにする効果がある。
しかし注意したいのは、「あの頃はよかった」「あの時は楽しかった」などの曖昧なイメージではあまり効果は得られないことだ。いつ、どこで、どんなふうに、どんなところが楽しかった、嬉しかったのか。明確なイメージ、映像で思い出せることが望ましい。
さらに、数秒間で再現できるような短時間の記憶がよい。例えば「夏季休暇に家族でハワイに行った楽しい記憶」というざっくりとした情報よりも、「夏季休暇に家族で行ったハワイのレストランで、クリームが沢山載ったパンケーキを分けあって食べている時の、鼻にクリームを付けている可愛い息子の顔」というくらいの詳細で短時間のイメージの方がより効果的である。
「ポジティブ・セルフトーク」は元気が出るようなメッセージをあらかじめ決めておき、気持ちが乱れた時に強く呪文のように唱えることで、気分を高揚させるテクニックである。 「元気メッセージ」「プラス思考フレーズ」とも呼ばれている。
ネガティブな思考は無意識にネガティブな結果へ自分を引っ張ってしまう。逆にポジティブな思考に切り替えることで、ポジティブな結果を招くことが出来る。自分が前向きになれるお気に入りのメッセージとはどんなものか、前もって考えておこう。
参考に怒りが湧いたときに使えそうな、ポジティブ・セルフトークをいくつか挙げてみた
・たまにはこういうこともあるさ。
・これも経験だ。
・自分の精神面での未熟さを再確認させてもらえた。
・これは精神を鍛える試練なんだ。
・この悔しさをバネに頑張って結果を出して○○(怒りの相手)を認めさせてやる!
・こんな最悪の気分の後にバッティングセンターに行ったらきっと気持ちがいいだろうな。
不安やストレスを感じて気分が悪い状態では思考が働きにくくなる。自分の気持ちを前向きに整えることで、次の対処法も考えやすくなるだろう。
さらに時間をおいて冷静に『タイムアウト』
事態が収拾したらとりあえずは考えることをひとまずやめて、目の前の他のことに没頭しよう。自宅に帰った後など、時間が経ってから「怒ってしまったこと」をもう一度思い出してみる。客観視して分析を行うことが、次同じようなことが起こった時の対策に繋がる。しかし、自分のことを客観視するためにはある程度の時間経過が必要だ。
冷静になった時点で、自分がどう思うか。自分の未熟さが招いた結果だと思うのか、またはやはり自分は怒っても仕方がなかったと思うのか、それによって今後の対応も変わってくるだろう。また、この時点で第四回で紹介した「アンガーログ」をつけるのも効果的だ。
以上の繰り返しで徐々に怒りに対しての免疫がついていくはずだ。