2016年3月23日水曜日
人工知能●10~20年後に65%の職種が失われる予想 なくなる傾向が強い仕事は?
人間は不要に? “人工知能社会”の行方
ロボット
“僕の印象はどうですか?”
「すごい。」
ロボット
“やったね。”
人のことばを認識するロボットや、公道での実験が進む車の自動運転。
今、コンピューターが人間のように判断する人工知能の技術が、目覚ましい進歩を遂げています。
最先端を行くアメリカでは、これまで人間にしかできないと思われていた知的労働まで担い始めています。
スポーツの試合展開に応じて瞬時に作られていく解説。
記者ではなく、人工知能が作成したものです。
今後、数十年の間に、およそ65%の職業が人工知能に置き換わるという研究結果も出ています。
人工知能の研究者
「機械ができる仕事が増えるにつれて、大卒のホワイトカラーの仕事の多くが失われていくでしょう。」
私たちの社会は、人工知能の進化とどう向き合えばいいのでしょうか。
記者の仕事を担う 人工知能 最前線
人工知能を使ったシステムを開発しているベンチャー企業です。
膨大なデータをもとに、コンピューターが自動で文章を作成する仕組みを開発しました。
バスケットボールの試合の映像です。
選手がシュートを放とうとした瞬間、プレーの解説情報が瞬時に作られます。
“この選手は最近スランプで、3ポイントシュートを15本中2本しか決められていない。”
データをもとに、選手の調子を表現しています。
人工知能はどのようにスランプだと判断したのでしょうか。
人工知能には、人間があらかじめ過去の解説記事と表現を選ぶための前提条件を与えています。
人工知能は、過去の記事がシュートの成功率何%のときにスランプと表現しているかを調べ、具体的な判断基準を作ります。
あるプレーをきっかけに選手のデータと判断基準をもとに最適な表現を選ぶのです。
この技術を応用したシステムは100社以上で導入され、年間10億を超える記事を生み出しています。
オートメーテッド・インサイツ ロビー・アレンCEO
「スポーツの記事だけでなく、金融や不動産などさまざまな業界のデータを取り込むことで、魅力的な記事を作れるようになりました。
データ分析や計算能力を考えると、機械は人間よりもずっと優れています。」
去年(2014年)この技術を導入した、世界有数の通信社です。
人工知能を活用したのは、企業の決算を伝える記事。
「市場の予測を超える売上高を記録した」など、人間が書いたような原稿に仕上がっています。
こうした決算記事の作成は膨大なデータを調べなくてはならないため、記者にとって大きな負担となっていました。
この技術を導入した結果、決算記事の出稿本数は10倍に増加。
さらに記者は、空いた時間をより高度な仕事に充てられるようになりました。
AP通信 アシステントビジネスエディター
フィラナ・パターソンさん
「単純な作業をなくすことができたことで、記者たちは外で取材し、より重要な記事を書く本来業務に専念できるようになりました。」
人工知能の普及は、記者の雇用を大きく変えると見られています。
専門家は、今後30年の間に記者の仕事の多くが人工知能に置き換わり、働き方が二極化していくと見ています。
メリーランド大学 ニコラス・ダイアコポラス助教
「将来的には記者の仕事にも格差が生まれていくと思います。
記事をチェックするだけの記者と、機械には書けない記事を執筆できるジャーナリストに分かれていくでしょう。」
発展途上の人工知能 進化のカギは
急速に進化する人工知能の技術。
しかし、まだ乗り越えなければならない壁もあります。
アメリカの大学入試や卒業認定で使われている小論文を、人工知能が自動で採点するシステムです。
人間と同じレベルで採点できるとして、全米で1,500以上の教育機関が活用しています。
人工知能はどのように採点をしているのか。
人工知能は、文章の長さや語彙の数など、人が考えた採点の条件と過去の論文データを照らし合わせ、具体的な判断基準を作っています。
こうした複数の基準を用いることで、論理的な構成などを正確に判断できるとされています。
しかし、このシステムには限界があると指摘する人もいます。
言語学者のレス・パールマン博士です。
人工知能は、文章の内容まで理解して採点しているわけではないといいます。
こちらは、ある大学院の入試で使われる小論文の模擬試験。
博士は、機械が評価する条件を満たしただけの特殊な文章を作成しました。
「これは意味のある文章ですか?」
言語学者 レス・パールマン博士
「いいえ、完全に意味のない言葉の羅列です。
誰が読んでも意味を成しません。」
これをソフトの解答欄に入力。
送信ボタンを押しました。
すると、数秒後。
採点結果が送られてきました。
言語学者 レス・パールマン博士
「点数は6点満点です。」
文章の価値を正しく評価されているのか。
現場では、不安が広がっています。
小論文を受験した大学院生
「このテストを受けるときには、いつも不安になります。
人工知能の採点では、文章の内容よりも長さが重視されている気がするからです。」
まだ発展途上の人工知能。
世界的な権威であるスチュアート・ラッセル教授は、最近開発された新技術「ディープラーニング」が進化のカギを握っているといいます。
ディープラーニングとは、人工知能が独自に判断基準を見つけ出す技術です。
例えば自動採点システムでは、あらかじめ人間が採点の条件を与えなくても、大量の論文を読み込むことで、みずから判断基準を見つけることができるようになるといいます。
カリフォルニア大学バークレー校 スチュアート・ラッセル教授
「10年後には、言語をもっとよく理解できるシステムが実現できるでしょう。
人間の価値観を理解して、物事を判断できるようになるのはこれからです。」
人間は不要に? 驚異の人工知能
ゲスト松尾豊さん(東京大学大学院准教授)
●人間しかできないと思われていた職種 人工知能が記事を書くまでになっているが?
やはり1つ大きいのはコンピューターが進歩していること、この計算スピードが非常に上がっていること。
それと同時に、データが増えていること、この2つだと思います。
例えば、先ほどのバスケットボールの記事を書くという例ですけれども、シュートを打とうとした瞬間に、「この人についての記事を書こう」とコンピューターは判断するわけですね。
じゃあ「何を書こう」と考えたときに、この人について、特徴的なことは何か、特筆すべきところは何かというところを過去のデータから探し出すわけです。
そうすると、シュートの率がかなり低いぞということを見つけて、それを記事にするという仕組みで、自動的に記事を書いていくということが実現されています。
●10~20年後に65%の職種が失われる予想 なくなる傾向が強い仕事は?
いくつかあると思うんですけども、例えば電話でのセールス、それからスポーツの審判、いろんな仕事に影響があると思いますが、例えば電話でのセールスっていうのはやることが比較的決まっている、相手の反応に合わせて言うべきことというのは決まっているようなもの、それからスポーツの審判というのは正確性が要求される。
例えばデータの入力作業なんかもそうだと思います。
そういったものが人工知能が利用されやすいといえると思います。
(なくならない傾向が強いものは?)
私自身は、職業がなくなる、なくならないというのは、少し違ってるんじゃないかと思ってまして、例えば同じ仕事でも、昔からあるんだけども、やることが変わっているっていうような仕事って多いと思うんですよね。
例えば教師。
教師という仕事は、これからデータがたまってくると、どういう生徒に、どういう教え方をするといいのかっていう情報がどんどん増えてきますから、コンピューターがより教えるのがうまくなる。
こういう人にはここでつまずきやすいので、こういう教材を教えるといいんじゃないか。
ただし、生徒をやる気にしたり、それから生徒の夢はなんですかと問いかけて、そこに至るまでの道を一緒に考えてあげるですとかね、そういった役割というのは、やっぱり人間がやるしかないですし、そういった比率っていうのがどんどん増えていくというふうに思います。
(同じ職種でも仕事の質が変わる可能性がある?)
そうですね。
質がやっぱり変わっていくと思いますし、よりクリエイティビティーの高いもの、それから判断が必要とされるもの、こういったものに変わっていくと思います。
●人工知能の研究、今、ビジネスチャンスと感じるのはなぜ?
それはですね、例えば監視カメラっていうのがありますね。
これは世の中いろんな所に設置されてるわけですけども、監視カメラで映っている映像っていうのを最後に見てるのは、やっぱり人間なんですね。
ここが一番のネックになっているわけです。
ところが、ここの部分まで人工知能ができるようになるとですね、実は今までは100%コンピューターができる仕事しかやらせることができなかったのが、もっと0~100%の間のグレーなところも、コンピューターにやってもらうことができるようになってくるということだと思います。
(グレーの部分が判断できるようになるのは、どういったことが可能になるから?)
これは怪しいのだと、この人は不審だって判断するには、その判断基準自体をコンピューターに教えてあげる必要があるんですね。
そこが今までの技術の一番難しかった、人間がやるしかなかったところで、自動化できなかった部分なんですね。
(基準を人間が教えていた?)
そうですね。
というのは、不審な動きというのは、いろんな形の不審な動きがありますから想定できないんですね、例外がたくさんあると。
例外を捉えるようなうまい判断基準の作り方、これができるようになってきたことっていうのが、今の人工知能、特にディープラーニングと呼ばれる技術の一番画期的なところかなと思います。
(機械みずからが経験によって、何が怪しいのか判断基準を作れるようになってきた?)
そうですね。
ドライバーは不要に 自動運転 最前線
スウェーデンの高速道路で行われている、自動運転の開発テストです。
メーカーのエンジニアは手放しで走行。
アクセルも踏んでいません。
危険があれば自動ブレーキが作動します。
自動運転の車は、カメラやレーザーなどのセンサーで周囲の状況を検知します。
その情報をもとに、みずから判断しながら走行するのです。
ボルボ・カーズ 電子制御技術リーダー エリック・コーリンさん
「自動運転は社会に多くのものをもたらしてくれます。
安全性が高まり、渋滞を解消することもできるのです。」
長年、安全性をブランドイメージにしてきたこのメーカー。
「システム準備完了、カウントダウン開始。」
事故の90%以上は人間のミスによって起きていることから、人工知能に判断を任せたほうが安全性が高まると考えています。
研究で使っているのは、会社が40年以上かけて蓄積してきた事故のデータです。
事故がどのような状況で起きたのか。
人工知能に学習させてきました。
その成果は、事故を予測し回避することに生かされています。
例えば、高速道路の路肩に止まっている車を見つけた場合、人が飛び出すリスクを計算し車線変更をする判断をします。
あらゆる場面を想定しておくことで安全性を高めたいとしています。
ボルボ・カーズ 電子制御技術リーダー エリック・コーリンさん
「すでに試作車はほとんどの場合に正しい判断ができます。
それを限りなく100%に近づけています。」
自動運転 実用化へ 安全と信頼は?
自動運転の開発が進む中、地元市民からは不安の声も多く聞かれました。
女性
「母親として、とても心配です。
自動運転がこんなにも早くに実現するとは思っていませんでした。
30年も40年も先の話だと思っていました。」
ひとたび事故が起きれば命の危険にもつながりかねない運転を、機械に任せてよいのか。
懸念する人が少なくないのです。
女性
「私は機械よりも人間を信用します。
ちゃんととまってくれるか、機械だとアイコンタクトで確認することもできません。」
安全性を確認するため、メーカーでは国や地元自治体と協力し、世界初となる社会実験の計画を進めています。
ボルボ・カーズ担当者
「通常運転から自動運転への切り替えを検証する段階まできています。」
2年後、市民100人に自動運転の車を使用してもらい、実際に事故を減らせるか、渋滞の解消に役立つかなどを検証します。
まずは、自動車専用道路50キロメートルで試験的に走らせ、その後、エリアを拡大することも検討しています。
さらに、自動運転を見越したインフラ整備も始まっています。
建設が進められているのは、自動運転の車が無人でも駐車できる地下駐車場です。
駐車場待ちの渋滞を減らし、効率化につながると期待されています。
地元自治体では今、都市計画や交通計画の担当者が、安全性を考慮したインフラをどう整備するか議論しています。
建築課
「事故のリスクを考えると、“自動運転専用”の車線を作ったらどうだろうか。」
交通局
「よい考えね。
(自動運転で)効率を追求するだけじゃなくて、市民の安全にも配慮が必要よね。」
インフラの整備や街づくりでは数十年先の計画を立てなければならないため、自動運転への対応を急いでいます。
ヨーテボリ市都市交通局 課長 スザン・アンダーソンさん
「今後20年以上、自動運転と普通の車が混在して走る状況が予想されます。
街づくりの課題を洗い出すために、自動運転の車だけが走る地区も考えています。」
そして世界共通の課題となっているのが、万が一事故が起きた場合に誰が責任を負うのかです。
スウェーデンでもメーカーと国が共同で法律を研究してきました。
自動運転を想定していない今の法律では、責任の所在が不明確となるおそれがあるのです。
ボルボ・カーズ政府業務 責任者
アンダース・ユーゲンソンさん
「責任を負うのは運転者か自動車メーカーか、あるいは人工知能の設計者なのか、国によっても考え方は違います。
スウェーデンやアメリカ、そして日本など、国ごとに対応する必要があり、難しい課題です。」
人工知能とどう向き合う
●街づくりやルール作り、かなりハードルがある?
そうだと思います。
やっぱりなんと言ってもいちばん大事なのは安全性で、とにかく人間の操縦よりも安全であること。
これを満たすっていうことがいちばん大事なことかなと思います。
恐らく1桁ぐらいは事故の確率減らないと、なかなか使われるようにならないのかなと思いますが、そこまで安全になったとしても、やっぱりまだまだクリアしていかないといけないハードルというのはかなりあると思います。
●何をもって車に安全だと教え込む?
例えば人工知能の場合は、価値基準を人間が与えると、それに対して最適なふるまいを学習することができるので、事故を減らすというふうな目的を与えることはできますね。
ところが事故を減らすっていったときに、それは事故の件数なのか、それとも死亡者の数なのか、あるいは重傷者と軽傷者っていうふうに、どういうふうに重みをつければいいのか、こういうあたりも従来は議論されてこなかったことなんですけれども、人工知能が社会に入っていくうえでは、十分に議論して、社会全体でコンセンサスを取っていかないといけない部分かなというふうに思います。
●社会実験を繰り返しながらコンセンサスを作り上げる?
そうですね、コンセンサスの問題もありますし、法律を定めていくということもあると思います。
やっぱり最終的にいちばん大事なのは、人間のための人工知能であるということだと思います。
人間のための人工知能といったときに、1つ重要な判断軸が、人間の尊厳をきちんと守るということだと思います。
例えば機械に命令されて、人工知能に命令されて働くのは幸せかというと、これはノーの人がかなり多いんじゃないかなと。
したがって、その仕事のやりがいとかですね、生きがいみたいなのを十分に尊重するような、こういう人工知能を社会全体で作り上げていく必要があるんじゃないかなと思います。
●人工知能の技術が広がれば本当に人間はハッピーになるのか、議論になっていたが?
そうですね。
やっぱり、人間の心っていうのは、非常に重要だと思います。
これから人工知能の技術、産業的にも非常に重要になってくると思いますし、少子高齢化する日本、労働力が減ってくる中で人工知能はキーとなる技術だと思います。
2016年3月11日金曜日
【動物】激流に生きる! 謎の水中モグラ【ダーウィンが来た!】
日本の渓流に、水中を自在に泳ぎ、自分の体ほどもある魚を捉える名ハンターがいます。
カワネズミです。
体長は10センチほど。名前にネズミとつきますが、実はモグラの仲間。地上から水中へと進出した“水中モグラ”です。
カワネズミは日本各地の渓流に生息していますが、長年通い続けるベテランの釣り人ですらほとんど見たことがないという、謎に満ちた動物です。
今回、研究者とともに、富士山を間近に望む川でカワネズミに長期間密着。驚きの暮らしぶりを撮影することに成功しました。
カワネズミは激しい流れをものともせずに水中を泳ぎ回り、滝さえよじ登って獲物を探し求めます。
ひとたび魚を見つければ鋭い牙でガブリ。相手がどれだけ暴れても決して離しません。
相手の動きが弱くなった瞬間、一気に岸辺まで引き上げます。
その狩りの様子は、まるで水中の格闘技です。狩りを数時間おきに繰り返し、魚を食べ続けるカワネズミ。これほど大食漢なのは、モグラの仲間であることの宿命でもあります。
モグラの仲間は体が小さい上に脂肪が少ないため、体の熱が奪われやすいのです。半日食事ができないだけで死んでしまうこともあります。
特にカワネズミがすむ水中は、地上に比べ過酷な環境です。狩りの技を磨き上げることで、水中という未知の世界に進出し、たくましく生き抜いてきたカワネズミ。その豪快な生きざまを、美しい渓流で追います。
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