2013年8月8日木曜日

なぜネットで「部屋の壁紙」が月商1億円も売れるのか?

なぜネットで「部屋の壁紙」が月商1億円も売れるのか?

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■いきなりですが、クイズです。
【問】ネットショップで「部屋の壁紙」を売って、月商1億円まで急成長しているお店があります。さて、どんなお店でしょうか?

(1)初心者のお客さんに壁紙の貼り方を教えながら売るお店
(2)全国のインテリア業者と派遣サービスの提携をしているお店
(3)世界中を真っ白な壁で埋め尽くすことをビジョンにするお店

(考えタイム)

ちっ





ちっ





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ぼーん!

正解は、(1)「初心者のお客さんに壁紙の貼り方を教えながら売るお店」です!

これは、楽天市場に出店している「壁紙屋本舗」というお店です。取り扱っているのは、壁紙をメインにしたリフォーム用品。職人を派遣するのではなく、お客さんが自分で施工する「セルフリフォーム」を基本コンセプトにしています。

本社は大阪にあり、「楽天市場ショップ・オブ・ジ・エリア2012関西エリア賞」を受賞するなど、楽天市場を代表するお店の一つです。

私が「ネットで壁紙をたくさん売っているお店がある」という話をすると、たいていの場合、まず「業者用なの?」と聞かれます。「いいえ、お客さんが自分でのり付けしながら貼るんです」と言うと、「は?」という顔をされることが多いです。

では、実際にどんな売り方をしているのでしょうか。

ページを見てみると、目に飛び込んでくるのが「全人類職人化計画」というフレーズ。「全ての人が職人のようなリフォームができるように『プロの技』を誰にでもわかりやすく説明していきます!」というリードがあり、ページには動画を活用した「壁紙の貼り方」など、数十ページを超えるコンテンツが用意されています。

また、お客さんから寄せられた300件近い事例が掲載されている「セルフリフォーム事例」のページや、「貼ってもはがせる賃貸物件向けリフォーム情報」のページなど、「全人類職人化」のビジョンを掲げるだけあって、かなりの充実ぶりです。

ここまでは、「ネットショップの施策」として想定の範囲内かもしれません。しかし、ウェブサイトのコンテンツを充実させるだけでは、全人類職人化はなかなか進みません。そこで、「壁紙屋本舗」が力を入れているのが「ワークショップ」です。



■リアルの「壁紙の貼り方教室」を開催。参加者は1万人超える
「壁紙の貼り方教室」が最初に企画されたのは、4年前。当初はまったくといっていいほど参加者が集まらず、自分たちでビラを配ったりもしていました。
「とにかく続けることと、教室の募集ページのレビューが重要なので集めていくこと、あとはとにかく楽しんでもらえるように気をつけています」(林耕一郎店長)

現在では、全国各地、月1回ペースで教室が開催されています。ちなみに、2013年7月20日(土)には、全国8会場(東京・大阪・名古屋・愛知県刈谷・富山・三重・滋賀・岡山)、午前・午後の2回転で開催され、各会場ともほぼ満員御礼となっています。参加費は有料(1名1,500円)です。

通算の参加者数は、大きな展示会でのブース開催なども含めると「1~2万人になると思う」(濱本廣一社長)とのこと。また、「壁紙を貼ったことがない人、壁紙を貼りたい人が集まって、お客さん同士でコーディネートの相談が始まったり、壁紙をその場で買って帰られる方が多くいらっしゃいます」(林店長)ということで、人類の職人化は着々と進みつつあるようです。
この事例を通して、私が大切だと思うのは次の3つです。
■(1)手間がかかることはマネされにくい
ワークショップは手間がかかります。手間のかかることは、簡単にはマネできません。逆に言うと、ネットショップの世界でメインになる接客の場は「商品ページ(ランディングページ)」ですが、極端にいえばコピペできてしまうので、マネするハードルが低いわけです。そこで、「いかにマネされにくい強みを持てるか」という視点が大切になってきます。

「オフラインは、物理的なキャパがあるので定員は多くできず、その割に手間がかかってしまいます。でも、それがあるからオンラインが活きてきて、『壁紙を選んで買うのはオンラインで』という、まさに螺旋的に回りながら上がっていっているように感じます」(林店長)

このように、「壁紙屋本舗」の例では、教室開催がまったくの非効率だった時期からやめずに数年間続けてきたことが、今になって実を結んでいるといえます。また、教室で初心者のお客さんと向き合うことによって磨かれたコンテンツが、次はオンラインに掲載されていく、というスパイラルも強みになっています。


■(2)「知る」と「わかる」の大きな違い
商品の価値をお客さんに「知ってもらうこと」と「わかってもらうこと」には、大きな違いがあります。

知るというのは、「これまで持っていなかった情報を持つこと」です。「壁紙って初心者でも自分で貼れるんだ」と知る。ただ、知ってもらえても、壁紙は売れません。がんばって安売りセールをしたとしても、要らないものは要りません。だから売れない。もし欲しくなったとしても、「器用でない自分でもできるのだろうか?」のような疑問が解消しなければ注文ボタンは押せません。

この「知る」が「わかる」になるためには、「やってみる」ことが必要です。自分で壁紙を貼ってみて初めて「壁紙を貼るとはこういうことか! 意外と簡単だし、楽しい!」とわかります。

つまり、接客設計図として、「知る」→「やってみる」→「わかる」というストーリーを進んでもらえるような行動デザインをすることが売上につながります。

「壁紙屋本舗」の場合、ウェブのハウツーコンテンツをいかに充実させても「やってみる」の壁を越えてもらうのは相当難しいわけです。「だったらリアルで教室やろう」という、ネットとリアルをむやみに区別しない柔軟な考え方が、功を奏しています。
■(3)聞いた人がワクワクしちゃうビジョンを掲げる
10年ほど前に「壁紙屋本舗」のページを初めて見たとき、「全人類職人化計画」という8文字熟語(?)を見て、「このお店は面白そうなニオイがする」と思いました。興味を引かれてページを探検したら、前述のコンテンツ盛りだくさんのページと出会って「やっぱり面白そう!」と思うに至りました。もしこれが、「セルフリフォームの楽しさを広めたい」と書いてあったとしたら、その先を探検まではしていなかったと思います。

「全人類職人化計画」という絶妙なビジョンと、その実践としての「壁紙の貼り方教室」。ここに、壁紙屋本舗ファンが増える理由がありそうです。

なお、冒頭のクイズの選択肢に「世界中を真っ白な壁で埋め尽くす」というビジョンがありましたが、社長の濱本さんは、まったく逆に「日本から白い壁をなくす!」というビジョンを持っています。「日本の壁は『とりあえず無難な白』ばかりで面白くない。カラフルでデザインも豊富な輸入壁紙で、日本の壁を楽しくしたい。業界の価値観を変えたい」という想いによるものです。これもまた、一度聞いたら忘れられないビジョンです。

※この連載では、「EC温故知新」というテーマで、「自動販売機型のネットショップにはできない売り方」でお客さんを魅了する事例などを中心に紹介していきます。
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