2018年4月10日火曜日

牛角ー不満点を聞かせてくれたら300円割引

●牛角の創業者とは?



 牛角のコンセプトと歴史については、創業者・西山知義氏(現・ダイニングイノベーション代表取締役会長)を抜きに語ることはできない。

 西山氏は1966年、東京都世田谷区に生まれた。日本大学法学部に在学中からイベント企画などの事業を始めた。学生起業家として頭角を現したが、経営を学びたくて大学を中退し、不動産業を営んでいた父の紹介で不動産会社に就職。賃貸営業を1年続けてたちまちトップセールスマンとなり、21歳で早くも独立。渋谷に賃貸管理会社の国土信販を設立した。

 バブル崩壊後、不動産事業に限界を感じた西山氏は、世界的に大成功を収めていたマクドナルドに関する経営書を読みふけった。本を読むだけでは飽き足らず、実際にマクドナルドの店で週3回のアルバイトを始めて、外食ビジネスの手ほどきを受けていった。

 ある時、揚げたポテトを7分で捨てるルールに疑問を感じ、「もったいないじゃないか」と店長に質問した。すると店長からは「これから何度も来てくれるかもしれないお客さまに冷めたポテトを提供すると、がっかりするだろう。君は食べたいか」と諭された。その時に西山氏はマクドナルドの根幹にある顧客本位の考え方を理解したという。それまでの西山氏の発想は、冷めたポテトをいかに売るかばかりを考えていたからだ。

 5カ月間のアルバイトでマニュアル化された外食チェーンの強さを確信した西山氏は、当時ほとんどが零細の個人店だった焼肉ビジネスに注目。焼肉でマクドナルドのような顧客本位のマニュアル化された店をつくれば、世界的に成功できると考えて、世田谷区三軒茶屋の住宅街に1996年、牛角の前身「焼肉市場 七輪」を出店した。

 内外装をこげ茶色で統一、メニューを筆書きにするなど日本的な焼肉店のイメージを構築。BGMにジャズを採用し、デザートにイタリアンジェラートを出すなど、従来の焼肉店のイメージを一新した。

●出店当初は苦戦した

 しかし、開業した焼肉店はまるで流行らなかった。素人ばかりで運営していたので、味も接客も安定していなかったからだ。

 そこで一計を案じた西山氏は、店に対する不満点を聞かせてくれたら300円割引するサービスを始めた。顧客から本音を聞き出し、業務改善、商品改良に役立てたのだ。 瞬く間に店のレベルは向上し、半年後には行列ができる繁盛店に生まれ変わっていた。翌97年には、牛の角を顧客の意見を迅速に取り入れるアンテナに見立てて、「炭火焼肉酒家 牛角」に店名を変更。フランチャイズ(FC)1号店を渋谷にオープンしている。

 レインズは今も「感動創造~すべては、お客様の笑顔のために~」を社是としている。メニューも接客も、顧客の意見を迅速にチャッチして集約。最もウケる店をつくるという考え方が、牛角という屋号に込められていると言えよう。

 98年に社名をレインズインターナショナルに変更。FC展開支援で当時辣腕を振るっていたベンチャー・リンクと提携して、7年で1000店の出店を実現した。その間、「しゃぶしゃぶ 温野菜」、「居酒屋 土間土間」といった新たに開発した業態も軌道に乗り、外食の総合企業への地歩を固めていった。

 現在の店舗数をコロワイドは公表していないが、レインズ全体で約1300店あるうちの半数強が牛角と見られる。