2012年10月16日火曜日

商品情報あえて見せず 闇鍋商法、ヒットの秘訣 小さなヒントで好奇心刺激


商品情報あえて見せず 闇鍋商法、ヒットの秘訣 
小さなヒントで好奇心刺激

2012/9/22 20:41
何が鍋の中で煮えているのか、食べてみるまでわからない。そんな「闇鍋」のように、あえて商品・サービスの中身を明かさずに売る手法が最近目立つ。「買い物で失敗するのを避けたい」心理が広がるなかで、なぜ消費者は受け入れるのか。ヒット・不発の事例から、上手に情報を隠す闇鍋マーケティングの勘所を探る。
 
CD・本、タイトル・作者隠し感性に訴え
ジャケットを隠し、手書きのメモと試聴だけでCDを販売する残響shop(東京都渋谷区)
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ジャケットを隠し、手書きのメモと試聴だけでCDを販売する残響shop(東京都渋谷区)
 JR渋谷駅から歩いて10分ほどの路地にたたずむ「残響shop」は、インディーズレーベルを抱える残響(東京・渋谷)が運営するCD店。この面積約90平方メートルの店が7月下旬からにわかに活気づいた。8月の売り上げは前月の4倍に。きっかけは音楽の「闇鍋」だ。
 保護カバーが付いた約80枚のCD―Rが大型テーブルの上に並ぶ。ジャンルはロックからジャズ、クラシックにわたるが、ジャケット写真はおろかタイトルも歌手名もない。「ノスタルジックに浸ってみたい人に」「闇にまどろむ女性ボーカル」という手書きメモのみ添えられている。
 客はメモを読んで気になるディスクをプレーヤーで試聴。購入を決めると初めてCD本体を見せられ歌手やタイトルがわかる。「自分の耳だけを判断基準にして買ってほしかった」(田畑猛店長)。専門学校生の女性(20)は「インターネットでは検索できない作品が聴けて、自分の音楽の幅が広がる」と話す。
本の書きだしが印刷されたオリジナルカバーの書籍(東京都新宿区の紀伊国屋書店新宿本店)
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本の書きだしが印刷されたオリジナルカバーの書籍(東京都新宿区の紀伊国屋書店新宿本店)
 同様の仕掛けで最近話題を呼んだのが紀伊国屋書店新宿本店(東京・新宿)のブックフェア「ほんのまくら」だ。文庫本100冊は特製カバーに書きだしの文章(まくら)のみを印刷。16日までの2カ月弱の期間中に1万8600冊売れた。
 情報を隠せば客は商品に対して先入観を持たない。「この歌手は知らない」「あの作家は難しそう」と、作品の中身に触れる前に購入をやめてしまうこともない。そこにメモやまくらといった、感性に強く訴える小さな「手掛かり」だけを示すと、客は興味を引かれ、作品の中身に対する想像力を刺激される。そしてこの手掛かりを頼りに、自分に合う商品を吟味することになる。
 わずかに与える情報が印象深いほど、客の心理の中で商品の本質が際立つ。電通総研の吉田将英研究員は「消費者を、本当に知りたい中身に触れさせることに成功した」とこの手法を評価する。

感性などに訴える商品では手掛かりすらないと客は戸惑う。失敗例は2007年に渋谷のミニシアター、シネマ・アンジェリカ(10年閉館)が開いた「ブラックシアター」だ。タイトルなどの作品情報を一切公開せずに上映。映画好きの来場を見込んだが、結果は2週間で約200人。「告知の仕方などに反省が残る」と企画・配給したDEP(東京・新宿)の佐伯幸子取締役は話す。
味隠した菓子、会話のネタを提供
 闇鍋商法では会話の「ネタ」を提供するような素材選びも効果的。味を明かさない菓子が好例といえる。味覚は個人差が大きいだけに、自分の体験が話題になりやすい。交流サイト(SNS)を起点に話題のスパイラルが起きればヒットが期待できる。二の矢、三の矢をつぐ工夫も重要だ。
パッケージに味を表示しないストライドストライプ・メガサプライズ味(東京都練馬区のいなげや練馬上石神井南店)
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パッケージに味を表示しないストライドストライプ・メガサプライズ味(東京都練馬区のいなげや練馬上石神井南店)
 日本クラフトフーズ(東京・品川)が昨年6月発売してヒットしたガム「ストライド メガミステリー」(136円)は今年1月からシリーズ化した。ブランドマネジャーの盛泰輔さんは「様々なミステリーをまぶしたことが成功の要因」と話す。パッケージに大型クエスチョンマークを配して目を引き、CMは消費者に「何味か分からない」感覚を動作で表現してもらい話題を呼んだ。
 カンロが5月に期間限定発売した「ピュレグミ」の「秘密の恋味」(店頭実勢100円程度)は、SNS上で「ベリー味」「バラの香り」と自分の味覚を表現するコメントが相次いだ。カルビーが4月に期間・販路限定で売り出した「ポテトチップス 謎の味」(128円)は、ツイッターの「気になる画像」ランキング3位に入った。
 ただし同じブランドでの展開はいつか賞味期限もくる。森永製菓は08年8月から「ハイチュウ」の袋詰め品「ひみつのハイチュウ」を期間限定販売してきた。第1弾は想定のほぼ倍が売れたが、徐々に新鮮さが薄れ、11年秋の第4弾は売り上げが減少。今年5月には別シリーズに切り替えた。

旅行ツアー、宿泊・食事のお得感示し集客
 闇鍋商法の“老舗”は旅行の行き先を明示しない「ミステリーツアー」だ。福袋と同様、場合によっては在庫処分の側面も持つ。ただ、客にとっては決して安くないのでハズした時の不安感がある。そこで集客の決め手となるのが「お得感」を示す情報の開示だ。
阪急交通社のミステリーツアーは行き先を隠し、豪華さを訴える
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阪急交通社のミステリーツアーは行き先を隠し、豪華さを訴える
 9月上旬の土曜日、新幹線のグリーン車でJR東京駅を出発した阪急交通社のツアー。タイトルは「2泊とも弊社最上級Sランクホテルに泊まる ミステリーツアー3日間」(2万9900円)だ。旅行地のヒントはパンフレットの「涼しさを満喫できる観光地へご案内」の一文のみ。この日はシニアを中心に40人超が参加した。全催行日で500人の目標に対し800人以上が申し込んだ人気商品だ。
 「1番引かれたのがホテルの『Sランク』。皇室の方も泊まられたというので、どんな施設か想像するだけで楽しみ」。女友達(58)と参加した都内の女性会社員(45)は目を輝かせる。
 ツアーを企画したメディア営業一部の村上浩和さんは「ミステリーツアーで重要なのは、通常より満足度を上げることで旅慣れたリピーターの心を強くつかむこと」と話す。日帰りなら食事やお土産、宿泊なら露天風呂やホテルのランクといった、顧客の期待度が高いものは、時に写真を入れて訴求することもある。
 購入して得られる費用対効果の高さ、いうなれば達成感を巧みに示して安心感を呼ぶ戦術が奏功し、同社のミステリーツアー参加者は急増。12年度は9月までの5カ月強で参加者(予約客含む)は数万人に達し、すでに11年度通年の参加者の約2倍に達している。

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